自己満足にならないように

ゼロからストーリーを紡ぎ出す小説家とは異なり、私たちのようなライターは、取材先からお聞きしたさまざまな“ネタ”を基に記事を仕上げます。「聞いてきたことを書けばいいだけでしょ」と思う人もいるかもしれませんが、これがなかなか難しい作業です。

たくさんの情報をどの順番で書いていくか、どのように表現すれば読者に伝わりやすいか、どうまとめれば取材先の真意をくみ取れるのかなど、原稿を書き進めるうえで考えなければならないことは山ほどあります。

取捨選択やバランス感覚も大切です。
以前かかわっていた紙媒体の仕事で、ある方にインタビューをした際、相手のふとした言葉が私の心に強く響きました。ぜひ原稿に入れようと書き始めましたが、その言葉の意味を伝えるには背景を説明する必要があるため、どうしても文字数が多くなってしまいます。誌面には文字数制限があり、このままでは他の情報が入らなくなります。
四苦八苦するうち、私は「これは優先して入れる内容ではないのではないか。ほかに書くべきことがあるのでは」との考えに至りました。そして個人的な思いを通すのを止め、別の内容に替えました。

WEB記事では、紙媒体ほど文字数を気にする必要はありませんが、読者にとって有益な情報を優先するという点は同じです。個人のブログではないので、書き手の思いを強く出し過ぎると記事がアンバランスになる恐れがあります。

幸いなことに(?)、彩ニュースには取材記事の最後に、ライターのコメント欄「取材を終えて」が設けられています。個人の所感は、そこに書くことができます。
もちろんそれも“読み手にとって分かりやすい文章”であることは必須です。いずれにしても、人に読んでもらうための文章を書くのは簡単ではないな~と思っています。

2022年11月
彩ニュース編集部