子育て家庭支援センター施設長
村野裕子さん
毎日をより幸せに過ごすために提案します
あなたが大好きなこと、大好きな人、大好きなものは何ですか?
こどもとの生活に限らず、毎日をより幸せに過ごすために、提案したいことがあります。
それは「大好きなことをいっぱい集めよう」ということ。
最初に、ママ、パパたちへ。
大好きなものは?と改めて聞かれると、すぐにスラスラ答えられる人とそうでない人がいるでしょう。「分からない」「そんなのない」と感じる人もいるかもしれません。
大好きなこと・人・物に囲まれた毎日と、そうでない毎日、どちらがいいでしょう?
多くの人はもちろん、大好きに囲まれた毎日の方が幸せだと感じると思います。 それなら!自分で大好きをいっぱい集めてみるのはどうでしょうか?
何気なく暮らしている私たちですが、実は日々、多くの選択を繰り返しています。
朝起きる時間、その日着ていく洋服、ご飯を食べるときも、家事をするときだって選択の連続です。
何かを選ぶとき、単純に「好きだから」という理由で選ぶことは少ないかもしれません。仕事、天候、家族の都合に合わせたり、お財布と相談することも多いですよね
けれど、仕方なくやっているように思えることも、実はどちらかを選んでいることも多々あります。 例えばこんな場面。
スーパーで牛乳を買うとしましょう。メーカーによって少々味が違います。いつも選んでいる牛乳は「味が好きだから」という理由ならば、これは分かりやすい「好き」ですよね。
けれどある日、他のメーカーの牛乳が割引価格だったので、そちらを買いました。この場合、好みのメーカー品ではないので「好き」を選んでいないように思えます。けれどね、このときは「値段の安い方を選んだ。値段の安い方が好き」という選択しているのです。
こんな場面はほかにもたくさん! 一つ一つは小さなことだけれど、この小さな「好き」を集める行為が、毎日を「大好きでいっぱい」にする秘訣(ひけつ)です。
自分の生活は大好きなものに囲まれていると意識すると、平凡な毎日が一気に幸せなものになり、そんな毎日の積み重ねで人生が大きく変わってきますよ!
こどもは自分の「好き」にまっすぐ 大人は否定しないで
では2~3歳ごろのこどもたちはどうでしょう。
こどもは自分の感情に素直で、「好き」という気持ちにまっすぐです。
大人になると物事を「好き」「嫌い」に分けて、それだけを判断材料に物事を進めていくことは少なくなるでしょう。世間体や損得勘定、社会のルールに適しているか? そんな多くのことを考えながら判断しています。
けれどこどもたちは、そのときの感情に素直に動きます。やりたいからやる、やりたくないからやらない、欲しいから手を伸ばす、いらないから捨ててしまう。
そうした自分の「好き」「嫌い」の感情に素直な時期に、大人がそれを否定しないことが大切です。
こどもたちと日々過ごしていると、大人から見ると価値がないように思える物を宝物のように大切にしている場面に出くわすことがあります。
例えば小石やダンゴムシ、ドングリや葉っぱ、お菓子の包み紙などが、こどものポケットから出てきたことはありませんか?
ドングリを拾うときも、大人から見たら虫食い穴がなく傷のついていない、きれいなドングリがいい物に見えるかもしれません。
こどもが手に取ったのは虫食い穴が開いている、見た目の汚れたドングリだったら、「なんでわざわざ数あるドングリの中からこの汚れたのを選んだの?」と思うこともあるでしょう。
けれど、この選ぶ行動が自分の好きを見つける経験になっています。
数ある石の中から1個を選んで拾う。いくつか食べたお菓子の中からお気に入りの包み紙を選んで取っておく。
それらは大人から見たらゴミかもしれないけれど、こどもにとっては宝物かもしれません。そんな宝物を見つけたこどもに、どんな声を掛けたらいいでしょう。
「そんな汚いもの捨てなさい」「なんでそんな変なもの大切にしているの?」と言いたい気持ちをぐっと我慢して、「これが気に入ったのね」「あなたはこれを選んだのね」と、こどもの行動を肯定する言葉を掛けましょう。
そして、「ママはこれを選んだの」「パパはこれが好きなんだ」と、大人の好きも伝えましょう。
これにより、好きなものは人それぞれで、何が好きでも否定されることはない、という基本姿勢が育まれます。
この考え方は「多様性」の考え方にもつながりますね。
「私とあなたの好きなことは、同じときも違うときもあるのが当たり前」という考え方が身についてくると、大人には理解のできないことにこどもが夢中になっているとき――例えばドロドロになっての水あそび、気持ち悪い虫を捕まえてかわいがる、ひたすらグルグル回るタイヤを見つめている、といったとき――にも、「私は好きではないけれど、あなたはそれが好きなのね」と認めることができますよ。
けれど、こどもの選んだ物が到底肯定できるものでなかったとき(不衛生なもの等)には、肯定した後に「これはバイ菌が付いているから代わりの物を探してみよう」ときちんと伝えてくださいね!
好きなことを見つけることは、生き抜く力を身に付けること
当たり前のことですが、人生は思い通りにはなりません。壁にぶつかり思い悩んだとき、もう駄目だと落ち込んだとき、みなさんはどうやって乗り越えてきましたか?
好きな音楽、おいしいご飯、気の合う仲間や家族…、助けになってくれるものは人それぞれ違うでしょう。
けれど共通して言えることは、人生の助けになるものは「好きなもの」ではないでしょうか?
「好きなことを見つけることは、生き抜く力を身に付けること」。大げさに聞こえるかもしれませんが、私は本気でそう考えています。
私は幼稚園教諭を経て現在、子育て支援に従事しています。
その原点がどこにあるのか?と考えた時、幼少期のあるできごとが頭に浮かびます。
団地住まいだった私は多くの異年齢のこどもたちと遊んでいました。ご近所の赤ちゃんが乗ったベビーカーを遊び半分で押していたとき、その赤ちゃんがすやすやとお昼寝を始めたのです。
それを見た赤ちゃんのママが私にこう言いました。「裕子ちゃんはこどもが好きなのね。こども好きな気持ちがうちの子に伝わって、安心してお昼寝したんだわ」と。
このできごとだけで現在があるわけではありませんが、「好き」な気持ちが原点にあることは確かです。
こどもたちも、ママやパパも、「大好き」をいっぱい集めて日々の生活を送ってください!
好きなものを自分で選ぶ行動を大切に
(大人には理解できない、こどもにとっての“宝物”。そんな宝物を見つけたこどもに対して)
「そんな汚いもの捨てなさい」
「なんでそんな変なもの大切にしているの?」
と言いたい気持ちをぐっと我慢して
「これが気に入ったのね」
「あなたはこれを選んだのね」
と、こどもの行動を肯定する言葉を掛けましょう。