【プラチナ企業】青翔運輸株式会社 生活も仕事も大切にしながらハンドルを握る

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材して紹介します。

今回は、社員数110名のうち64名がドライバーという「青翔運輸株式会社」(杉戸町)です。最近は20代前半の新入社員が増えているとのこと。また、多くの車種をそろえているのも特徴の一つです。近年、特に働きやすい職場づくりに力を入れている同社を訪ねました。

♯15 青翔運輸株式会社
創業:1985年
事業内容 : 一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業、倉庫業など
特徴 : 充実した研修体制、フォークリフトなどの資格取得費用の支援、デジタコ(※)表彰など
(※)デジタコ=デジタルタコグラフの略。自動車に取り付け、速度や走行距離・時間などを記録する機器

企業担当者にインタビュー

安全品質環境部 部長 中野泰之さん

安全品質環境部 部長 中野泰之さん

職場環境づくりを担っている中野泰之さんに、社内制度や取り組み内容などを伺いました。(以下敬称略)

中野さんはドライバーをしていた経験もあるそうです

丁寧な研修で未経験者も安心

――どのようなものを輸送しているのですか。

中野 全て企業間の取引で、冷凍冷蔵品を除き、食品から家具、段ボール、建設資材などまで、多様な商材を製造工場などから物流センター等に輸送しています。関東一円を対象としていますので、ドライバーは朝出発して夕方には戻れます。

――多種多様な商材を運べるよう、たくさんの車種をそろえているんですね。

中野 平ボディ車や、荷室の側面が大きく開くウイング車、クレーンの付いたユニック車などがあり、サイズも1tから15tまで幅広いです。会社からドライバーに乗る車を指定することはなく、自分に合った車を選んで働くことができます。2t車に20年も乗り続けている人もいますね。

――未経験者が入社した場合、どのような研修があるのですか。

中野 まずは座学でドライバーの心構えなどを学び、次に先輩ドライバーの助手としてトラックに同乗し、仕事を覚えていきます。そして、先輩からOKが出たら、私が試験官になって最終チェックをし、合格となったら独り立ちをするという流れです。 

研修期間は1カ月を目安にしていますが、個人差があるため、それを超えることもありますね。ドライバー経験のある人でも前職とは積み荷などが違いますから、短期間でもきちんと研修を受けてもらっています。また本人の希望で、例えば2t車から4t車に乗り換えるときは、改めて研修を行い、安全に走行できるようにしています。

事前に本人の不安を取り除いていることが、社員の定着につながっているのかなと思います。

――大型免許取得などにかかる費用の支援はあるのですか。

中野 加盟している「一般社団法人埼玉県トラック協会」から助成金が出ます。また当社の倉庫業・運送業で必要となる、フォークリフトやクレーンなどの免許の取得費用は、自社で支援しています。

同社が保有する車の一部。大型ウイング車(上)と、2tバン

子育てとの両立や安全運転を会社が応援

――家庭と仕事のバランスが取れるように配慮しているそうですね。

中野 入園式や入学式、卒業式、運動会、三者面談など、子どもに関わる行事に出られるよう、社員の勤務を調整しています。もちろん、女性だけではなく、男性社員も同じです。また、子どもの発熱などで急に休むことになった場合は、別の車両等でカバーしております。

昨年度から全社の休日も設けていて、隔週の土曜、毎週日曜、祝日など社員は月に6~8日は休めます。有給休暇も取りやすいよう配慮しています。

――社内制度の一つ“デジタコ表彰”とはどういうものですか。

中野 デジタルタコグラフの記録を基にした表彰です。100点からスタートし、例えば、一般道で60㎞/h以上、高速道路で80㎞/h以上のスピードを出すと減点となります。急ハンドル、急ブレーキ、急加速でも減点です。1日の業務が終わり、100点が取れていれば、能率手当が支給されます。

さらに1カ月、3カ月、6カ月と100点を継続することができたら、その節目ごとに表彰されます。交通ルールを守れば良いわけですから、ドライバーはみんな、満点を目指して安全運転を心掛けていますね。実際、クリアする人も多いです。

――確かに励みになりますね。社員の健康づくりにも気を配っているそうですね。

中野 健康診断は、年に2回です。また昨年からトラックのキャビン内を禁煙にしました。社内の喫煙所は残していますが、これを機に禁煙にチャレンジする人もいます。皆さんには、健康で長く働いていただきたいと思っています。

――2024年4月から運送業では時間外労働の上限が規制されるなど、働き方改革が必須となっていますが、こちらではどのような対策をしているのですか。

中野 どうしても労働時間が長くなりがちな業界なので、いろいろ考えています。一つは、取引先への値上げの交渉です。これまでよりも短い労働時間で社員に同じ額の給料を支払うためには必要なことです。とにかく、給料を下げないように努力しています。

――予想外の渋滞に巻き込まれた場合も労働時間が長くなってしまうので、難しいですね。今後、どのような職場づくりをしていきたいですか。

中野 ドライバーは、精神面の安定も重要です。万一、家庭のことが気になって運転に支障が出てしまっては大変ですから、仕事一辺倒ではなく、プライベートな時間も大切にしながら働ける会社を目指しています。勤務時間の調整など臨機応変に対応し、女性も男性も働きやすい環境をつくっていきたいと思っています。

社員にインタビュー

社内の雰囲気がとても良く、仲間にも恵まれました

社内の雰囲気がとても良く、仲間にも恵まれました

ドライバー 布施良美さん

ドライバー 布施良美さん

子育てと仕事を両立しているドライバーの布施良美さん。仕事の都合で、直接取材はできませんでしたが、書面で質問に答えていただきました。

荷物の積み込みが終わり、車にシートを掛ける布施さん

――入社のきっかけと仕事のやりがいを教えてください。

布施 インターネットで求人募集の検索をして、自宅から近いことと、月6~8日の休日があること、収入面から青翔運輸を選びました。運送業に携わるのは初めてで、あまり良いイメージを持っていなかったのですが、面接までのやり取りや、面接担当の方の対応で、そのイメージが払拭されたのが後押しになりました。

現在、2t平ボディのトラックで、工場などの建物の天井に設置するケーブルラックを運んでいます。自分が運んだものが使われて、その現場が完成したときは、うれしいです。また、集荷先や配達先で「ありがとう」と感謝の言葉をもらえると、とてもやりがいを感じます。

――職場環境で良いと思うのはどんな点ですか。

布施 力仕事の際に仲間にサポートをしてもらえることや、性別や年齢の差別がなく、意見が言いやすい社内の雰囲気が良いと思っています。

――仕事と生活のバランスをどのように取っていますか。

布施 運送業なので、仕事の合間を縫って用事を済ませることは難しいのですが、配車担当の上司に相談し、子どもの学校行事への出席や病院への通院などができるように、時間を調整してもらっています。

――今後の目標を教えてください。

布施 無事故でお客様に感謝される仕事を遂行することが目標です。

青翔運輸株式会社
住所 埼玉県北葛飾郡杉戸町鷲巣110-2
電話 0480-38-1128

取材を通して

「埼玉県SDGsパートナー」に登録している同社は、社会貢献活動も行っています。NPO法人が配布する支援物資を各拠点に配送したり、地域のイベントでウイング車の荷室をステージとして提供したりしているそうです。

一方、「2024年問題」と言われる、運送業界全体の働き方改革への対応も急がれ、中野さんは苦心を重ねている様子でした。

長年、運送業に携わっている中野さんは「飛行機や船、鉄道など、輸送の手段はいくつかありますが、その末端ではトラックが動いているんです。運送業はライフラインの一つと考えています」と話していました。確かに空港や港、駅まで荷物を運び込んだり、運び出したりしているのはトラックです。なくてはならない存在です。

2024年の働き方改革は、消費者の生活に大きな影響を与える可能性があります。決して運送会社やドライバーだけの話ではなく、誰もが自分事として考える必要があるのではないかと思いました。

取材日:2023年8月7日
矢崎真弓